錦鯉初心者講座

病気について

病気対策の基本

長寿といわれ丈夫な錦鯉も時には病気になることは避けられない。
病気の診断と治療には専門的な知識が必要であり、素人判断はできるだけ避ける方がよい。
病気にかかったと思ったら、まず錦鯉を購入した専門店などへ連絡して、的確な処置を受けることが望ましく、そのためのも、日頃から、鯉の様子を注意深く観察し、早期発見・早期治療を心がけることだが、あまり神経質になり過ぎ、薬剤などの不必要な使用をしないことも大切なことである。
抗菌剤や抗生物質によって、対抗性の菌などが生じる危険もあるためである。

病気対策としては、逆説的な言い方と思われるかもしれないが、病気にならない錦鯉を育てることが一番大切なことではないだろうか。
ある専門業者は、「最近の鯉は弱くなった」、「飼育環境の根本的な考え方が間違っているのでは」と、研究開発の進化で宇宙でも飼育可能となった現代の飼育設備機器や薬品類に頼ることの多い現代の錦鯉飼育方法に警鐘を訴える。
あまりに管理された水質で慣らされた鯉は、わずかな変化にでも対応しきれない、鯉本来が古来から有していたがはずの強い環境適応力が損なわれているのではないかという危惧を提起しているのである。

錦鯉の先祖であり、錦鯉もその資質を受け継ぐ、丈夫で、環境適応力があり、長生きする遺伝子自体は、200年にも上る品種改良の中でも決して失われてはいない。
環境やエコなどがキーワードとしてもてはやされる現在、もう一度、祖先である鯉の生態とその生育してきた環境というものを考えていいのではないだろうか。

池の底も見通せるようなおだやかな水面の下、わずかにうす緑がかった水の中でゆうゆうと群れを成して遊泳しているのが昔からの鯉の持つイメージではないだろうか。
鯉の泳ぐ池からは生臭い匂いなどは立ち上っていない。
また、泥などのない池の底には付着珪藻の生えた石などが見えている。
こうしたイメージは、鯉を飼育する上で必要なキーワードを教えてくれている。
はたして、自分の錦鯉の水槽や飼育池などの環境で、このようなイメージは実現されているだろうか。

水質維持のための循環濾過装置は、確かに排泄物などの処理など、それ自体高く評価されるものだが、その能力の高さが逆に有用バクテリアや必要な菌類まで濾過してしまい、いわば無菌状態を作り出してはいないか。
錦鯉の長生きする環境を考えると、藻類や水草の共生があり、全体の水が自然循環し酸素供給もバランスが取れていることで残餌や排泄物などの汚泥もなく、水が一部に滞留することもなく腐敗菌など雑菌の繁殖も抑えられ、アンモニア臭や生臭い臭いもない。
このような飼育システムを作っていくことが、錦鯉と仲良く一生に渡って付き合っていくことになるのではないだろうか。

大き目の水槽で、水草、藻類などのある自然の池とその周辺環境に近い状態を作り,状態を保ちながら,そうした環境の中で数尾の稚魚から錦鯉を育ててもいいのではないだろうか。
専門店などでも、そうした自然の再現の仲での飼育を薦める意見が増えてきていることから、一度、自分でもトライしてみる価値はあるのではないだろうか。


細菌性の代表的な病気

カラムナリス症(口腐れ病・ヒレ腐れ病・尾腐れ病・エラ腐れ病)

原因と症状

カラムナリス菌がエラ、体表、口、ヒレなどの上皮に感染し、菌の生息巣「コロニー」を作ることによって発病する。発生部位により「口腐れ病」。「ヒレ腐れ病」などと呼んでおり、感染した部位には白色もしくは淡黄色の膿のようなものが付着しているように見える。この付着物のようなものがコロニーであり、重症になると感染部位は壊死したようにぼろぼろになり欠損することになる。

エラ腐れ病:最初はエラの一部が白くなり、症状が進むと灰白色に変色し組織が腐ったように壊死していく。体内への酸素の取込みが悪くなるので、食欲不振、動作が緩慢になり、群れから離れ注水口などに寄るようになる。 泳ぎがおかしく、外傷も見られない場合、エラ腐れ病を疑ってみることが必要。

口腐れ病:口周辺が赤く、又は黄色の炎症を起こし、進行すると灰白色に変色し幹部組織がぼろぼろに壊死していく。

ヒレ腐れ、尾腐れ病:ヒレの薄い部分が徐々に白く変色し、溶けたようになります。感染した部位は、白色、淡黄色の付着物がついたように見えます。


対策

発病したら抗菌剤を使ってカラムナリス菌を殺菌しなければならない。テラマイシンやエルバジュなどの薬浴とパラザン、イスランのような経口投与の抗菌剤を使う二種類の方法がある


松かさ病(一般的には立鱗病、穴あき病や赤はん病も含まれる)
原因と症状

主としてエロモナス菌などの複数の菌による感染によって発症する、その名称のとおり、全身もしくは一部のウロコが松かさのように浮き上がり逆立ってくる感染症である。感染した場合、菌の複合の種類や魚自体の健康状態によって、穴あき病になったり、赤はん病となる。症状は壁面に体をこすり付けたりするような泳ぎ方もあるが、外見的な変化で発病を確認することが多い。


対策

これらの病気については感染した錦鯉を取り出し、個々に治療するのが普通で食塩水、エルバジュなどの薬浴で治療する。 穴あき病まで進行した場合は、患部のウロコ摘出やびらんした皮膚を切り取るなどの外科的処置も必要となるので、早期発見、早期治療が肝心。


寄生虫による代表的な病

ここで紹介する病気とその対策は、初めて錦鯉を飼育しようとするビギナーでも発見し、対処も市販の薬剤を使って治療しやすい基本的な病気を中心にまとめたもので、手術が必要なものや専門家にゆだねた方がよいと考えられるものなどは、割愛してある。

ただし、そうした専門家、業者にゆだねた方がよいものに関しても魚の泳ぎ方の以上など、日常的な観察で発見可能なので、注意深く錦鯉の日常を見守ることは必須であることを留意し、健康で丈夫な錦鯉の育成を心がけることを薦める。

まず、魚を飼育した経験があれば一度は目にする最もポピュラーなものとして、白点虫の寄生によって引き起こされる白点病をあげないわけにはいかない。発病すると進行が早く、伝染性も高く、最も警戒を要する病気の一つでもある。水温25℃以下で一年中発生し、特に水温が変わりやすい春先や、梅雨時、秋口には発病しやすい。また、移動などで急激に水温や水質が変わると発病する場合が多い。白点病は早期発見が第一で、初期のうちに治療をすると、すぐに白点がとれて健康体に戻る。

初期には、胸鰭、頭部などにケシ粒より小さい白点が生じ、次第に全身に広がっていく。白点は指の腹で触ると砂粒状に感じられる。症状が進むと、寄生部からは多量の粘液が分泌され白濁する。頭部よりも体部、とくに背部に大量に寄生する傾向があり、体表が赤く充血する。魚は体を壁などに擦り付け、症状はますます進み、重症になると表皮が剥離してボロボロになる。

また、体表やエラにたくさんの白点が見られる場合は、例外なくエラにも寄生を受けている。エラにのみ寄生した場合は、食欲不振や酸素を求めて水の循環しているところに近寄る傾向などが見られるが、エラの粘液が多く分泌される以外の肉眼による判断は困難である。エラに寄生すると酸素不足に極端に弱くなり、大形魚でも死亡することがある。

対策としては、白点虫が表皮の下、エラの中側に潜入しているので薬剤での虫の駆除は困難だが、ホルマリン、メチレンブルーなどの消毒薬による薬浴は効果があり、治療の一般的手段となっている。

その他、寄生虫を原因する主な病気として次のようなものがある。


イクチオボド症・キロドネラ症・トリコデナ症

原因と症状

原虫類(イクチオボド(コスチア)、キロドネラ、トリコデナ(サイクロキータ))の寄生によって起こり、寄生虫自体は目で確認できないが、体表は白濁し、白い膜で覆われたような白雲症状を呈し、食欲が落ち、注水口や池の隅に群がったり、壁をこすったりと異常行動が伴う。


対策

病気発生時にホルマリンによる薬浴と課マンガンさん仮、食塩などの薬剤による駆除は可能。


ツリガネムシ症

原因と症状

ツリガネムシが魚のウロコを浸触・付着し、そこが虫の増殖の場となっておこる病気。 米粒大の白点がポツポツできたと思うと、次第に拡大し、患部周囲の皮膚が充血して赤くなる。症状が進行すると、白点部のウロコが部分的に逆立つようになり、欠損、脱落が起き、治癒してもウロコが変形したままになることが多い。さらに、表皮が潰瘍を起こして、池中の汚泥が付着して泥かぶり病(水カビ病)のようになる。 体表を擦り付けるような動作が頻繁に見られ、末期症状に至ると水面近くを浮遊し、食欲が不振となる。


対策

決め手となる対策はなさそうだが、ホルマリンやメチレンブルーなどの薬浴、2%食塩水の薬浴などを繰り返し行い、患部からの細菌による二次感染染防止のため抗生物質の使用も考慮する必要がある。


ダクチロギルス症・ギロダクチルス症(イクチオボド症・キロドネラ症・トリコジナ症)

原因と症状

ダクチロギルスなどが表皮やエラに固着寄生しておこる魚病。寄生されたエラは上皮の増殖・肥厚・変形がおこり魚は呼吸困難となる。原虫病と同じような白雲症状を呈し、食欲が落ち、注水口や池の隅に群がったり、壁をこすったりと異常行動が伴います。 病害・症状はトリコデイナ・コステイア症と同じで虫の活動により表皮の増殖・粘液の過剰分泌となり、エラは呼吸障害となる。典型的な衰弱魚寄生虫である。


対策

ホルマリンの薬浴や水産用マゾテン、過マンガン酸カリの散布。病気の魚だけを別に取りだして過マンガン酸カリや食塩水の薬浴も治療法として効果がある。


イカリムシ症

原因と症状

イカリムシが魚の体表、ウロコなど所かまわず寄生することによっておこる。肉眼でもウロコや体表にイカリムシが付いているのを確認できるが、胸ビレを小刻みに動かしたり、背ビレを振るわせたり、体を池壁などにこすりつけたり、飛び跳ねたり通常とは異なる泳ぎし、やがて隅の方でジッとして動かなくなる。


対策

水産用マゾテンなど有機リン剤の散布。病気の鯉を取りだして麻酔をかけてからピンセットで虫を取り除いた上で、傷口の消毒、二次感染防止のため抗生物質などの使用でほぼ完全に駆除できる。有機リン剤が効果的なため、以前ほど脅威ではなくなっている。


ウオジラミ症

原因と症状

ウオジラミ(チョウとも言う)が吸盤を使い魚の体表各所に吸着し吸血する。またウオジラミは水中を自由に遊泳して、寄生の宿主を。魚体への影響は付着による機械的な皮膚損傷と毒液による損傷があり、毒液注入により付近に強い炎症がおこり出血する。さらに患部が細菌、カビなどの二次感染を起こす危険もある。


対策

イカリムシ同様、水産マゾテンなど有機リン剤が効果的で、成虫だけでなく幼虫も駆除できるので、反復使用で完全に駆除できる。


新しく発見された病気と対策

ここで紹介する錦鯉の病気は、近年発見、報告されているものを紹介するが、対策としてまだ確立されていないものもあり、注意すべき病気として下記のようなものが上げられる。

浮腫症、ローソク病

1970年代後半になって確認された新しい病気で、毎年梅雨の時期に集中して発生している。対策もじょじょに進んできているが、決定的なものはないようである。


原因と症状

原因はまだ完全に突き止められていないが、病気の錦鯉のエラからウイルスが見つかり、このウイルスによるものと考えられている。
この病気に感染すると、飼育している池、水槽の中の全ての錦鯉が発病し、2、3日で死滅する急性の致死性の危険なものである。

感染した鯉は遊泳せず、水面に浮き上がり、平衡感覚を喪失する異常な状態を示す。外見上は、体のむくみ、眼球の落ち込み、松かさなども見られることもあるが、必ずしもこうした症状を発症するとは限らない。エラ上皮が著しく肥大し、エラの毛細血管を圧迫、エラの重要な機能である塩類の吸収、排出機能が麻痺し、循環障害をきたす。
梅雨の時期に屋外などで飼育していて、1歳(当歳)魚が水面に浮かんできて、注水、排水溝の近くに集まり始めるような場合、この病気の感染を疑ってかからなければならない。


対策

対処療法として、早急に食塩で薬浴させてやる必要があるが、完治させる治療法や感染を未然に防ぐ方法は確立されていないのが実情である。


抗酸菌症

1981年から翌年にかけて発病が確認されたもので、発病魚は全て当歳魚で、発病時期は冬期に限られている。


原因と症状

結核菌と同類の抗酸菌が魚の浮き袋、腎臓、秘蔵など内臓に感染して発症する。病魚は痩せて背が痩せこける「背コケ」症状がみられるようになる。感染した魚は必ずしも死に到るものではないが、慢性的になり、放置すれば衰弱する。

冬場に当歳魚に「背コケ症」が見られたら、疑ってかかる必要があるが、感染の確認には開腹して浮き袋などの検査を要する。


対策

菌についても対策についても確定されていないが、伝染力は強いとされ、治癒困難な病気とされる。特効薬は今のところないものの急死することもないので、飼育管理を整えることで回復する可能性もある。発している。


新穴あき病

最近報告された新しいもので、ヒレやヒレの付け根、口唇部など、上から見ただけでは比較的見つけにくい所に発症する。 従来の穴あき病と異なる特徴としては、当歳魚などの小型の鯉でも発病し、加温越冬池では高水温ほど症状の進行が早い、患部の大小に関係なく死に至り、病魚を一緒にしていると他の魚に伝染し、従来使用していた水産用抗菌剤では治療効果が得られないなどがあげられる。しかし、動物性抗生物質などの経口投与で治療可能であることが確認されているので、早期発見、早期治療を行うことで解決可能である。


原因と症状

穴あき病と同様の複数の菌に感染したことによると見られ、外部からの感染であることを考えれば、新たに購入したり、鯉を移動する時に鯉をビニール袋などに入れ、下から魚体の下部、ヒレ周辺などの様子を観察して、イカリムシ等の寄生虫もないのにウロコ1枚でも赤くなっていたり、充血していたり、ヒレの先端から出血し欠損しているような症状が少しでも認められるようなら、「新穴あき病」を疑うべきだろう。

症状を確認できたら、専門店や獣医師に相談し、指示された薬剤で治療することである。


対策

早期発見が第一、発見したら専門家に相談というのが基本である。

治療としては、1尾でも病魚がみられた場合は、他の魚も感染している可能性が高いので、飼育している全てを集団で治療することが望ましく、動物用抗生物質のエンロフロキサシン、ジフロキサシンを使用する。この場合、薬はエサに噴霧などで吸着乾燥させて与える。薬が紫外線で分解されるので、乾燥は室内で陰干しし、乾燥後は投与時の薬剤の流失を防ぐため、エサの表面をフードオイル等でコーティングし、5~7日間投与することが基本的な方法である。

獣医師に相談すれば、抗生物質の注射なども施してくれるので、あくまで専門家への相談が薦められる。